秋の香りが金木犀から‥‥と見ていたら‥‥夏からのお土産(ᵔᴥᵔ)。
「ここを切ったのよ。」
上着をすーっとあげて腹部の手術痕を見せてくれた。
30㎝はあるんじゃないかと思われる大きな傷が現れた。
「すごい大きな手術、大変だったね〜。」
「うん、でももう大丈夫。」
何の手術によるものだったのかは聞かなかった。
毎回朝会うので
「おはよう。きょうは元気?」
いつもにこやかに、
「元気元気。気持ちがいいね。」
だんだん歩幅も大きく、軽やかな歩きになっていった。
それから1ヶ月ほどしてからだろうか、
頭にスカーフを巻いているようになり、
「髪が抜けちゃうのよね。」
小さく笑いながら言います。
あー、もしかしたらあの傷は腫瘍摘出後のものだったんだ。
「またすぐに元に戻りますよ。」
2週間ほど会えない日が続いた。
しばらくぶりで会った彼女は、
「3週間に1回のペースで抗癌剤を点滴しなくちゃいけないのよ。点滴の後は気持ち悪いし、足が痺れて目眩がするから、公園まで来れなかったの。でも、歩かないとお腹の調子が悪くなって困ります。」
「それは辛かったね。でも外に出られて会えて良かった。」
「そうなんだけど、また点滴しなくちゃだからね。」
副作用がひどくなるって分かっていて治療を続けるのは、
病院に向かう足どりも重いでしょうし、
大変な勇気と気力が要ります。
ある点滴予定日の次の日、
「あれ!昨日は点滴の日じゃなかったの?公園に来れたって事は、身体にだんだん薬が合ってきたのかな。」
と言うと、
「点滴の前にいつも血液検査をするんだけど、今回は血小板の量が減ったみたいで点滴ができなかったのよ。」
「だからまた来週なの。薬の副作用がなくて嬉しいけど、血小板が減少してるなんて怖いですよね。」
「血小板が減るって、出血した時血が止まりにくくなるんですよね。体調には影響ないの?。」
「それは大丈夫。ただ怪我しないようにしなくちゃ。」
「きっとその薬が正常な細胞にも悪影響を及ぼしたんだ‥‥心配。次回の血液検査okだといいね。」
また、あの軽やかな歩きがもどってきますように🙏。